まとめノートを作っている余裕はないし、電車の移動や仕事の休憩時間でさくっと復習するツールが欲しい、、、と思っていたら、最近、法律事務所などで流行っている(?)GoogleのNotebookLMというものを見つけた。
このツールは、長い文章や文献の要約に役立ったり、それをディスカッション形式で音声会話として生成するなど、とんでもない優れものらしい。これを上手く使えば、効率よく試験勉強ができるのではないか?という仮説を立てた。
というわけで、善は急げ。私も、5月2日から試験的に導入してみた。
しかし、NotebookLMは、少なくとも音声概要は本日をもってもう使わないことにした。その理由は、、、
「ところどころ明らかに間違っているし、関連性の薄い内容に終始された」からである(もちろんフィードバックは送った)。
まず、比較的得意科目である憲法を、NotebookLMで整理してみた。もっとも、人権分野については、内容が多岐にわたるため、比較的量の少ない憲法総論と統治分野の2つを整理することにした。
参考文献は、①芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法』第8版(有斐閣、2023年)、②安西・巻・宍戸『憲法学読本』第4版(有斐閣、2024年)、③高橋和之『立憲主義と日本国憲法』第6版(有斐閣、2024年)である。いずれも、憲法の基本書として受験生から絶大な信頼を置かれている文献である。この3文献を知らない受験生はまずいないだろう。
この3文献のうち、「憲法総論」「統治」の分野を抽出して、NotebookLMにまとめさせた。そのAIが出した音声概要の答えは、以下の通り。
まず、「憲法総論」に関しては、以下の通り。人物名の誤りは、目を瞑ってあげてほしい。
なお、この音声概要には、思わず閉口するほどツッコミどころが多いのだが、最も致命的な誤りを指摘するならば、「天皇の行為類型」という論点に対するAIのまとめ方である。天皇の「おことば」等を、どの行為類型に位置づけるか、という問題を解決するための論点である。3つの文献では、様々な学説が紹介されているが、②では、天皇の行為類型を私的行為&公的行為としての国事行為に分類する「二行為説」と、私的行為&公的行為&象徴としての地位に基づく行為に分類する「三行為説」が対立しているところ、実務上は三行為説が有力である、という旨の整理がなされている(読本27~28頁参照)。これに対して、③では、「(おことば等)は私的行為とはいえず,かといって国事行為で説明することも容易でない。」と言及したうえで、二行為説と三行為説に関する論点に踏み込んでおり、③は二行為説の立場を支持しているようにも思える(立憲主義と日本国憲法46頁参照)。①の文献では、上記の学説などを紹介しているものの、芦部先生が果たしてどちらの学説を支持していたのか、この文献で明らかにされていない(芦部憲法51~52頁)。
ところが、この3つの文献のみを参考にしているはずのAIは、「学説だと、天皇の行為を国事行為とそれ以外の公的行為の二種類で見るか、あるいは、更に私的な行為を加えて三種類で整理するか、という議論があるんです。まぁ、二行為説、三行為説なんて言いますけど。(音声5分0秒あたりを再生)」と、説明している。「不動産を即時取得する」というが如き支離滅裂なレベルで、誰もそんなこと言ってねぇよ!!どう解釈したらそうなるんだ!!wwwww
・・・というわけで、「憲法総論」では、音声概要の生成について特に指示を出していなかったが、上述のとおり、私の期待をはるかに下回るほどあまりにも出来が悪かったため、「統治」では「憲法の「統治分野」を、20分で詳しく司法試験受験生に説明せよ」との指示を出した。
その結果が、これである。なお、芦部先生については「あしぶしのび先生」と紹介されている。うん・・・せめて人物くらいは正確に言ってくれ。もう一度言うが、私は、統治分野について「司法試験受験生に対して20分で詳しく説明せよ」と指示したはずだ。5分40秒でまとめられたことがわかった時、相当の覚悟はしていたのだが、、、
・・・国会、内閣、裁判所における、重要論点及び重要判例については、一切触れてくれなかった。「砂川事件」「苫米地事件」「板まんだら事件」など、重要判例は多数存在するのに、だ。財政・地方自治に至っては、全ての文献で触れられていたはずなのに、一切無視されている。なお、会話の途中で、いきなり樋口陽一先生が現れるが、これは憲法学読本271頁を引用したものと思われる。なお、「統治分野」の音声AIには、国民主権に力を入れて説明している部分があるが、それは、、、憲法総論でまとめるべき論点だ。いや、論点にすらまともに触れられてねぇ!w
AIよ、いったい、何を学習したというのだ、、、
・・・と、音声概要の出来の悪さに驚いたが、このツール、欠点だらけというわけではない。「学習ガイド」と「マインドマップ」は秀逸で、まさに「それっぽい」まとまり方がなされている。これは、非常に強い。このようなまとめ方ができているのに、なぜ音声概要だけは壊滅的に酷いのだ?と言いたくなるほどだ。だからこそ、この「学習ガイド」の粗探しをして自分の司法試験用レジュメにブラッシュアップするのに、たいへん骨の折れる作業になってしまう。少なくとも、AIがまとめた原稿に対して、「本当にそうか???」と、毎回疑問と検証のうえ、論証に落とし込む必要がある。
これはこれで、非常に実力がつきそうな気がするが、それをするならば、さっさと重問に手を付けて起案の練習をしたほうが良い気がする。
他のロー生や予備試験受験生は、NotebookLMをどのように使っているのだろうか?