1 はじめに
法科大学院の夏休みも後半に差しかかってきたところで、夏休み最終日に実施される「司法試験短答模試」の臨みかたについて検討していきたいと思う。
2 今回受験する司法試験短答模試とは
今回は、某司法試験予備校が実施する短答模試を受験する。試験範囲は令和5年司法試験短答式試験で出された分野全て(そのように受験者に公表されていました)。つまり、通常の模試のようにどこからともなくやってきた難しい問題ではなく、実際に司法試験で出た問題がそっくりそのまま出題されるのである。そうすると、今年の予備試験を受験している法科大学院生にとっては、司法試験と予備試験の問題が一部重複しているという性質から、既出の問題を再び解くという事象が発生してしまう。したがって、この試験を受験するにあたって、今年の予備試験をすでに受験した者にとっては各個の「真の」実力を測ることができない。そこで、今回の試験に対してどのような姿勢で臨むべきかが問題となる。すなわち、ここで短答模試受験の目的を定めておこう、というのである。
3 短答模試受験の目的
(1)満点取得説
司法試験の問題がそのまま出るのであれば、司法試験の「正答」も法務省から出ているのだから、その正答をふまえて自分自身の勉強方法がしっかり身についているのか確認するべく、満点を取得するよう臨むべき、と考える説がある。つまり、事前に今回の模試の「正答」を理解して模試本番に臨み、満点を獲得することを目的として受験するという、「勉強プロセス」重視の考え方である。
この考え方に立つと、満点を獲得したという事実が後期授業の成績獲得に向けた自信につながるし、勉強方法が間違っていなかったという証明として強くはたらく点でメリットがある。
一方で、満点を獲得することは、現実の司法試験ではありえない。そのため、そのあり得ない事象によって他の受験生の偏差値等を大きく乱してしまうばかりか、現時点での自分自身の実力が見えなくなるというデメリット(批判)がある。また、言葉を選ばずにあえて言うとするならば、この試験は極端に言えば「暗記試験」となるため、模試の経験が自分の学力向上につながるのか疑問である
(2)完全実力説
本番の司法試験の問題であるから、問題や解答は法務省に掲出されているものの、あえて一切見ずに自分の実力だけで試験に臨もう、と考える説である。ただし令和4年以前の過去問は解答を含めて閲覧してよいものとする。つまり、もしも今の知識、勉強で司法試験を受験したらどの程度の成績を獲得できるかを自分の目で確かめる、という「事実・結果」重視の考え方である。
この考え方に立つと、これまで学習した内容で身についた実力が可視化され、今の自分が司法試験合格に対してどの位置にいるのか「現実」を把握することができる点にメリットがある。
一方で、法務省で既に解答が出ているにもかかわらずそれを見ずに勉強を続け、結果として悲惨な成績しか出なかった場合、それは「勉強のプロセス」が間違っていたという証明になる。そうすると、上述した満点取得説の時点でできるはずだった改善の時期が大幅に遅れてしまうデメリットが生じることになる。
また、現時点で本当に「自身の実力」を把握すべきかということ自体に疑問がある。たった3か月の基礎講義と自習で突破できるのであれば、そもそも合格まで苦戦しないはずだし、予備試験短答くらいは簡単に合格できるはずだからである。したがって、今の時期における自身の実力を把握するメリットが少ない。
4 私の考え方
私は、上記の説を踏まえて、満点取得説をもとに試験に臨みたい。既に法務省のほうで試験内容が出ており、かつ解答の出ている問題であるからこそ、問題に対する分析・理解をする時間が十二分にとられていると考えられ、これを活かさない手はないからである。
現時点での実力をここで把握したところで、結果は目に見えているうえに、たかが知れている。来年の3月ならまだしも、勉強を本格的に始めたばかりの時期に完璧を求めようとするよりは、前期で低迷した成績をどうにかするべく、「勉強プロセス」の見直しに注視すべきではないか。
そうすると、既出の問題を分析し、正答がなくとも正答を論理的に導き出して満点を取得することを目指すほうが、より今回の模試を効果的に受験できるのではなかろうか。
5 結論
以上のことから、私は次回の司法試験短答模試については、満点獲得を目指すこととする。
(皆さんは、上記のような模試を受験するならば、どのような目的をもって臨みますか?)