号外:CBT化で司法試験六法もデジタル化される、、、(2024.08.05)

8月2日、法務省は司法試験のデジタル化に関する概要をHPに載せた。

なおリンクは下記の通り。

法務省:司法試験及び司法試験予備試験のデジタル化について (moj.go.jp)

さて、私達司法試験受験生の一番の関心事は、「司法試験用六法は紙媒体のままか、デジタル化されるのか」ということである。これまで紙媒体で条文を引いてきた私達にとって、これは最も重要な関心事の一つと思われる。

そこで、以下、法務省が発表したQ&Aを見てみよう。

8月2日に発表されたQ&A(上記リンクからQ&Aのリンクを見れば閲覧ができます)。このQ3とQ5を見て欲しい。
なお下記のQ&Aは上記リンクのQ&Aからそのまま抜き出している。

Q3 CBT試験はどのような方法で実施されるのでしょうか。
A CBT試験では、司法試験委員会(法務省)が用意したパソコンを使用して試験を実施することを予定しています。なお、従前同様、集合形式での試験実施を予定しています。

Q5 CBT システムに搭載する司法試験用法文の表示形式について教えてください。
A 電子政府の総合窓口(e-Gov)の法令検索のような、横書きでの表示を予定しています。

あっ・・・(察し)。

まず、Q3について私からの疑問を1つ。
・・・Q6(HP参照)を見ると、少なくとも私が今までに使用したことのない、極めてハイスペックなPCのようだが、これを受験生全員分に対して満足のいくPCを貸与できるのか?予備試験の受験者は年々増え続け、約1.5万人になろうとしており、司法試験受験生も在学中受験が認められたことから3000~4000人が受験するようになった。そうすると、短答の試験日が予備と司法で重複している現行制度では、少なくとも2万台の同スペックのPCを法務省が全て準備しなければならない計算になる。

そのような満足いく高スペックPCを、この半導体不足の中で、法務省が集められるとは、到底思えない。

高校「1人1台端末」継続に暗雲、故障とコスト増でGIGA受け皿に危機 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

→これは2023年11月に書かれた記事だが、徳島県が国策に従い、県内の県立高校など28校の生徒に1人1台ずつ端末を用いさせようとした結果、同年11月13日時点で1万6500台中、5865台の端末が故障し、授業に支障が出たという。

県立高校のタブレット端末に故障が相次いだ問題が一応の収束 県教委が四電工の謝罪と提案を受け入れ【徳島】|日テレNEWS NNN (ntv.co.jp)

→2024年5月28日のニュースによれば、1万6500台中、1万117台が故障していた。

このように、原因は多々あれど、法務省が上記の徳島県のような想定外のトラブルに巻き込まれないとも言い切れない。仮に(ないとは思う、とお断りしておくが)、司法試験受験者が4000人いたとして、端末が4000台貸与されたとする。試験当日に、最後の短答まで正常に動作した端末が38.7%だったとする(1548台が正常だったとする)。この数字の根拠は上記の徳島県の事例をふまえたものであり、私が想定しうる最悪の事態を示したものである。で、令和5年度の司法試験合格者は1700人台であったことを考慮すると、もうお分かりだろう。

運よくPCを最後まで壊さなかった者が司法試験に100%合格する!

・・・という、今までの努力を踏みにじるようなパロディが発生してしまうのだ。

以上をまとめると、Q3における疑問は、「物価高と半導体不足の今、そんなハイスペックPC、どこからかき集めるんだよ!?」という点にある。

次に、Q5について私から疑問を。

今時の弁護士の先生って、六法まで電子化していたっけ???

たしか、司法試験のCBT化の背景には、PCで訴状等を入力するようになった現代の実務から乖離しているとか、答案を書く人にとって手書きは無駄であり腱鞘炎の原因になるとか、これを添削する人が(受験生の字の汚さが原因で)読めないとかいう、一言でいえば「時代錯誤」からの脱却があったはずだよな?

私は、六法まで電子化した先生に、まだ一度もお会いできていない。時代錯誤からの脱却を意図してCBT化しているのなら、「六法まで電子化」するという、時代錯誤の方向にわざわざ走ってどうすんねん!

・・・そうかそうか、つまり私はこんなやつなんだな(エーミール風)。
すなわち、紙の六法しか引くのに慣れない、おじさんだといいたいんだな?(違いますw)

最後に、Q&Aになかったものについて私から「もひとつ質問いいかな?」。

崖ロー「本試験の答案構成用紙、どこに行った?」

法務省「君のような勘のいいガキは嫌いだよ。」

(法務省から答案構成用紙について8月時点で何も発表がされていないことをみると、まだ答案構成についてどうするか検討段階なのかもしれない。しかし、仮に答案構成用紙まで電子化されるようなことが起きるならば、辰巳の今年の趣旨規範ハンドブックで指摘がなされているように、「ペーパーの答案構成用紙も廃止された場合には、当事者や不動産等の相関図が手書きできなくな」り、「PC画面上で図を作成するのは手書きの10倍不便」になることから、今まで以上に司法試験の合格が難しくなるかもしれない。腱鞘炎と診断されて病院で治療薬をもらったほうがましだ!と言い出しかねない。)

何がともあれ、私にできるCBT受験回避の唯一の手段は、「さっさと進級して在学中受験の要件を満たすこと」だ。
他のロー生とは環境が違うが、少なくとも私は、どのみち留年すれば即退学かつ今住んでいる家を失うという「崖っぷち」な状況。そして、経済的に(在学中受験を含めて)2回受験できれば奇跡という状況である(修了後、まともに受験できるほどの経済的見通しが立っていない)。まずは何としてでも進級して生き残ってやる!!

本記事をシェアしたい方はこちら。

著者情報

大学法学部卒業後、電鉄系、法律事務所での勤務を経て、法科大学院へ進学する。果たして筆者は無事に司法試験と司法修習を突破し、「弁護士・外国法事務共同弁護士法人」を設立のうえ、日本を代表する大手事務所へ成長させられるのか!?
とある司法試験受験生のブログです。

目次